紙をめぐる話|紙の研究室 No.15
手ざわりの言葉
─歌人に教わる触覚を言語で再現する方法
ざらざら、つるつる、さらさら、すべすべ。
紙の触感を伝えるとき、
私たちは無意識にオノマトペを使いがちです。
しかしひとくちに「ざらざら」といっても、
その種類は多様なはず。
手ざわりをもっと緻密に言い表すためには、
どんな言葉を選べばいいのか。
社会的な規範に縛られない自由な言語感覚で、
短歌、評論、エッセイと
広範囲に活躍する歌人の穂村弘さんに、
手ざわりにまつわる短歌を紹介してもらいながら、
さらなる表現の可能性について訊きました。
オノマトペ=擬音語、擬声語、擬態語を包括的にいう語。
紙の触感を伝えるとき、
私たちは無意識にオノマトペを使いがちです。
しかしひとくちに「ざらざら」といっても、
その種類は多様なはず。
手ざわりをもっと緻密に言い表すためには、
どんな言葉を選べばいいのか。
社会的な規範に縛られない自由な言語感覚で、
短歌、評論、エッセイと
広範囲に活躍する歌人の穂村弘さんに、
手ざわりにまつわる短歌を紹介してもらいながら、
さらなる表現の可能性について訊きました。
オノマトペ=擬音語、擬声語、擬態語を包括的にいう語。
2014.04.01
初出:PAPER’S No.46 2014 春号
ざらざら、つるつる、さらさら、すべすべ。
紙の触感を伝えるとき、
私たちは無意識にオノマトペを使いがちです。
しかしひとくちに「ざらざら」といっても、
その種類は多様なはず。
手ざわりをもっと緻密に言い表すためには、
どんな言葉を選べばいいのか。
社会的な規範に縛られない自由な言語感覚で、
短歌、評論、エッセイと
広範囲に活躍する歌人の穂村弘さんに、
手ざわりにまつわる短歌を紹介してもらいながら、
さらなる表現の可能性について訊きました。
オノマトペ=擬音語、擬声語、擬態語を包括的にいう語。
紙の触感を伝えるとき、
私たちは無意識にオノマトペを使いがちです。
しかしひとくちに「ざらざら」といっても、
その種類は多様なはず。
手ざわりをもっと緻密に言い表すためには、
どんな言葉を選べばいいのか。
社会的な規範に縛られない自由な言語感覚で、
短歌、評論、エッセイと
広範囲に活躍する歌人の穂村弘さんに、
手ざわりにまつわる短歌を紹介してもらいながら、
さらなる表現の可能性について訊きました。
オノマトペ=擬音語、擬声語、擬態語を包括的にいう語。
2014.04.01
初出:PAPER’S No.46 2014 春号
手ざわりの表現を短歌から探る
手ざわりを詠んだ短歌を選んでおもしろかったのは、作者がほとんど女性だったこと。
ひょっとしたら触覚には性差があるのかもしれないな。
考えてみたら洋服を選ぶ時なんかも、女性は触感に惹かれる人が多い気がするし。
例えば一首目。たぶんこの人は主婦だと思うんだけど、普通は指輪を付けたまま包丁を使って料理しますよね。
だけど指輪を外してミンチをぐちゃぐちゃ混ぜていたら、離婚の決意なのか何なのか、急に自由な気持ちが生まれた。
ひょっとしたら触覚には性差があるのかもしれないな。
考えてみたら洋服を選ぶ時なんかも、女性は触感に惹かれる人が多い気がするし。
例えば一首目。たぶんこの人は主婦だと思うんだけど、普通は指輪を付けたまま包丁を使って料理しますよね。
だけど指輪を外してミンチをぐちゃぐちゃ混ぜていたら、離婚の決意なのか何なのか、急に自由な気持ちが生まれた。
この時この人は夫との関係性から解放されて、動物に返っている。
ちょっと恐い感じがするけど、触覚って他の五感とは違って、こういう獣っぽさとかプリミティブな感じがある。
二首目もそう。本当の彼女って誰なんだ?ってことも気になるけど、それより恋人を触感で楽しんでるところが独特。
男性の喉仏って女性からするとレアだから、そこに性的な何かを感じるんじゃないかな。
喉仏は急所でもあるし、全体に不穏な雰囲気が漂う歌だよね。
三首目は、なかなかうまいところを挙げてるなぁって感じた歌です。
視覚や味覚なら簡単だけど、自分の国を触覚で表すのって難しいから。
3つとも触感が違うでしょ、柔らかかったり、ひんやりと固かったり、ごわごわしてたり。
でもどれもどこか日本をイメージさせるよね。
触覚は記憶とも関係しているのかもしれない。そのものの固有の触感が脳内にインプットされているというか。
ちょっと恐い感じがするけど、触覚って他の五感とは違って、こういう獣っぽさとかプリミティブな感じがある。
二首目もそう。本当の彼女って誰なんだ?ってことも気になるけど、それより恋人を触感で楽しんでるところが独特。
男性の喉仏って女性からするとレアだから、そこに性的な何かを感じるんじゃないかな。
喉仏は急所でもあるし、全体に不穏な雰囲気が漂う歌だよね。
三首目は、なかなかうまいところを挙げてるなぁって感じた歌です。
視覚や味覚なら簡単だけど、自分の国を触覚で表すのって難しいから。
3つとも触感が違うでしょ、柔らかかったり、ひんやりと固かったり、ごわごわしてたり。
でもどれもどこか日本をイメージさせるよね。
触覚は記憶とも関係しているのかもしれない。そのものの固有の触感が脳内にインプットされているというか。
触感の微差を伝えるための「ソムリエ方式」
ここまで挙げた短歌はどれもオノマトペを使っていないけど、心の機微のようなものまで伝わってくるいい歌でしょう。
そもそもオノマトペって「つるつる」とか「ざらざら」みたいに合意が取れたものしか通用しないところがある。
もっと微妙で複雑なものになった時、それに対応する言語を「つむつむ」とか「ざみざみ」にしても、一般的には納得されないよね。
じゃあ紙の場合はどうすればいいかというと、ひとつの解決策として「ソムリエ方式」があるんじゃないかな。
ソムリエはオノマトペで表現しないよね。
「朝もやの立ちこめる光の中で…」とか「爆撃にあった都市の焼け跡から掘り出された…」みたいな修飾を連ねていく。
そもそもオノマトペって「つるつる」とか「ざらざら」みたいに合意が取れたものしか通用しないところがある。
もっと微妙で複雑なものになった時、それに対応する言語を「つむつむ」とか「ざみざみ」にしても、一般的には納得されないよね。
じゃあ紙の場合はどうすればいいかというと、ひとつの解決策として「ソムリエ方式」があるんじゃないかな。
ソムリエはオノマトペで表現しないよね。
「朝もやの立ちこめる光の中で…」とか「爆撃にあった都市の焼け跡から掘り出された…」みたいな修飾を連ねていく。
「このワインは『にゅらもろ』ですが、こちらのワインは『にゅらもろぴん』で、その『ぴん』が違いなんです」とか言われても誰もついていけないから、比喩でいく。
紙の場合なら「水をこぼしたら100mくらい流れていきそうな艶感」とか。
その時に大切なのは、みんなが普遍的に知っている現象で例えること。
紙の場合なら「水をこぼしたら100mくらい流れていきそうな艶感」とか。
その時に大切なのは、みんなが普遍的に知っている現象で例えること。
紙を触る行為って追体験できないじゃない?雨が降るのは共通体験できるけど、紙は実際に触ってみないと妥当性の判断がつかない。
だから「カラスのクチバシのような光沢」なら成立するけど「ガビ鳥の…」ではだめなんです。
こういうことを意識して実際の紙に当てはめてみれば、表現の可能性も今よりずっと広がると思うな。
だから「カラスのクチバシのような光沢」なら成立するけど「ガビ鳥の…」ではだめなんです。
こういうことを意識して実際の紙に当てはめてみれば、表現の可能性も今よりずっと広がると思うな。