
たとえばオフセット印刷は一度転写されてから印刷しますが、活版印刷は直接印刷するのでインキの量が違います。 そのため墨(黒色)がより黒々と刷り上がります。過度の印圧や過剰なインキ量ではなく、適正に調整された理想的な印刷物を キッス・インプレッションといいます。もちろん、用紙や印刷面によってはある程度印圧を強めたり、インキ量を多めに調整することは必要です。 また、オフセット印刷は原稿(デジタルフォント)の線が、ほぼそのまま再現されますが、活版印刷は活字の文字線よりもごくわずかに インキがはみ出て太めに見えるため(マージナルゾーン)、目に優しく読んでいても疲れにくいともいわれています。
基本的に活版印刷はどの紙にも印刷することができますが、良い効果が出せるかどうかは紙との相性によって分かれます。 一般的にコットンが入っている紙や、インキが浸透しやすい非塗工紙などは相性がよいです。 またオフセット印刷だとブランケットが紙粉で埋まって嫌われる和紙も活版印刷のほうが適しているかもしれません。
近代の印刷の主流は、イラスト、写真印刷のカラー化によりオフセット印刷に早々に移行されました。 それでも最後まで活版印刷が活用されたのは文字表現でした。詩集、句集、名刺など、言葉に想いが込もっているからでしょうか。 デジタルフォントもデジタル通信も悪くはありません。でも、紙の繊細なテクスチャと活版印刷の質感が溶け合うことによって、 文字(言葉)は送り手の想いを「紙」という葦(パピルス)船に乗せて受け手に届けます。 活版印刷が「目的」ではなく魅力ある「手段」として選ばれることを望んでいます。